
2025年4月から東京日本橋院の院長となりました五味です。
3月までは栃木の自治医科大学とちぎ子ども医療センターで20年以上小児脳神経外科をやっていました。よろしくお願い申し上げます。
今回9月14日から17日までオーストリアのグラーツで国際神経内視鏡学会が開催されました。
https://www.erasmus.gr/microsites/1300
グラーツはオーストリアで人口第2の都市で、市の中心部が「グラーツ市歴史地区」として世界遺産に登録されている、美しい素敵な街です。
小さい街で、路面電車を使うと1日で見て回れるくらいです。

朝のグラーツ

郊外のエッゲンベルグ城(世界遺産)
ここで2年に1回の国際神経内視鏡学会が開催されました。

学会場入り口
脳神経外科の手術の世界でも、できるだけ小さなキズで、脳への負担も減らすために、内視鏡が用いられるようになって来ています。
内視鏡には、胃カメラのような細長いロープ状の「軟性鏡」と、20-30cm程度の金属の棒状の「硬性鏡」の2種類があります。
胃や大腸、気管支などの検査に用いられるのが「軟性鏡」で腹部や胸部の手術に用いられるのが「硬性鏡」ですね。
脳外科では「軟性鏡」は主に水頭症などの「脳室」という脳の中の髄液の空間内での操作に用いられます。
「硬性鏡」が最も頻用されているのが、「脳下垂体」を中心とした脳の「底」の部分の手術で、鼻や口から「硬性鏡」を入れて頭蓋底の骨を壊して、脳を下の方から手術して行きます。
その他にも、脳内出血は以前は大開頭手術で血腫を取っていましたが、今では頭蓋骨に1つ穴を空けてそこから「硬性鏡」を入れて取れるようになっています。
機器の改良も手術技術もこの20-30年で急速に進歩してきています。

神経内視鏡の参考図
その内視鏡の国際学会のお昼のセミナーで、0歳からの頭のかたちクリニックの紹介をする機会をいただきました。

0歳からの頭のかたちクリニックの発表会場は天井画があるような素晴らしいホールでした。
聴衆は全世界からの脳神経外科医です。
なんで、そんな「内視鏡」の学会で0歳からの頭のかたちクリニック?と思われるでしょう。
頭のかたちのゆがみの原因の1つに「頭蓋縫合早期癒合症」があります。
頭蓋を構成する骨と骨の間につなぎ目の「縫合」がなく、癒合=くっついてしまっている状態の事をいいます。その結果頭のかたちがゆがんできてしまうのです。
この病気があると、ヘルメット矯正治療をしても形はよくなりません。手術が必要です。その手術を「内視鏡」を用いて行うのです。
2枚の骨のくっついている部分を切り取って、2枚に分けていく作業を、内視鏡で観察しながら行います。
今までは大きく頭皮をはがさないとできなかったことが、皮膚と骨の間に内視鏡を入れて行うことで小さい皮膚切開で可能になりました。この「縫合切除術」を行った後にヘルメットで矯正を行うことで、頭蓋形態の改善ができるようになっています。

左ラムダ縫合早期融合症 術前と術後
そのような経緯で、今回国際神経内視鏡学会のセミナーをヘルメットメーカーのジャパンメディカルカンパニーが行うことになりました。
同社はヘルメットだけでなく、頭蓋・脳の手術練習用のモデルも作成しており、セミナーではまず名古屋大学の竹内先生がこのモデルのお話を、ついであいち小児保健医療総合センターの加藤先生が縫合切除術のお話をされ、最後に私がお話をしました。
まず、日本国内4か所で位置的頭蓋変形に特化した自由診療のクリニックを展開していること、4院とも5カメラ同時撮影可能な3Dスキャナーを備えていること、月400名以上の新たな患者さんに受診していただいており、これまでの受診者数が14500名以上になることを紹介しました。
患者さんの内訳として、斜頭症(斜頭・短頭をふくむ)が73.5%、短頭症が11.4%、長頭症が1.3%で正常も13.8%であること、また当院での治療適応を説明しヘルメット矯正治療を選択された方が、約6000名であったこと、また月齢別・重症度別の治療効果のデータについても紹介しました。
頭蓋縫合早期癒合症の方はこれまで18例いらっしゃるのですが、通常はあまり頻度が高くないと考えられていた「片側ラムダ縫合早期癒合症」が7例だったことはとても驚きでした。この結果から、位置的頭蓋変形、特に後頭部斜頭症の場合に、片側ラムダ縫合早期癒合症の可能性を想定し、それを見逃さないことがとても重要であり、しかもそれは理学所見だけでは判断が難しいという、とても重要なメッセージを発出することができました。
その後、これまでのわれわれのヘルメットの開発の経緯を紹介しました。
さらにヘルメット矯正治療を行う場合は、正確な診断と治療の理解が必須であることを強調し、そのためにジャパンメディカルカンパニーでは、適切なヘルメット療法のための研修会を開催していることも紹介しました。
最後に、国際的にもその輪を拡げていることについて紹介しました。
我々と同じヘルメットを、KKホスピタルというシンガポールでも有数の大病院で採用していただいているのですが、治療開始の前に昨年日本にスタッフがいらっしゃって、研修を受けていただき、外来や工場の見学もしていただいたりしたのです。
会場では、多くの参加者が私の発表の写真撮影をしていましたが、終了後イラクの女性医師が、是非われわれのところでもやってみたいと声をかけてくれました。
イラクにはまだヘルメットがなく、向き替えとか理学療法で対応しているけれど、なかなかよくならないと言っていました。それはそうですよね。
このような機会をきっかけに、われわれ0歳からの頭のかたちクリニックの取り組みが、世界中の子供たちのために役に立っていく事を願っています。
東京日本橋クリニック 日本橋院長・医師 五味 玲
