0歳からの頭のかたちクリニックの要職者4名の座談会の様子を全4編にわたって配信します。0歳からの頭のかたちクリニックにはどういう特徴があるのか、中で働いている先生方がどのような考えをもってやっているのかなど是非、0歳からの頭のかたちクリニックをご理解いただく一助にしていただけると嬉しいです。 登場する先生方は以下の4名です。
0歳児からの頭のかたちクリニックで日々診療にあたる医師にお集まりいただき、それぞれの専門的視点から治療やクリニックの取り組みについて伺うインタビュー。第2回目となる今回は、0歳からの頭のかたちクリニックならではの強みや親御さんへの対応について話を聞きました。
五味:いろいろな診療科の先生方と一緒に診察に当たっているという点が最大の強みではないでしょうか。たとえば当院には、頭蓋変形だけでなく他の病気を持ったお子さんも来院されます。先日も染色体異常があるお子さんが来られましたが、隣に専門の先生がいらっしゃったのですぐに相談しながら進めることができました。このような環境は非常に理想的ですよね。0歳からの頭のかたちクリニックは現在全国に4院展開していますが、それぞれがオンラインで繋がっているので、他院から相談があった場合も同時に診ることができます。そういったことは他のクリニックではなかなかできないことではないでしょうか。
大賀:全く同感です。私たちのクリニックでは、小児脳神経外科、小児科、小児外科、形成外科の複数のベテラン専門医が診察にあたっています。こどもの健やかな発達を考える場合、こうして多領域の先生方の目が入るということは非常に望ましいことですよね。私たち小児科医はもっともっと勉強していかないといけない、といくつになっても思うところであります。
西巻:私も小児科医ですが、40数年働いてきた中で実は頭蓋縫合早期癒合症(注)の患者さんを受け持った経験はなく、病棟で見たこともありません。そのように経験がないと気付かずに見逃してしまうケースもあるでしょう。たとえば小児科医が1人でやっているようなクリニックでは、頭蓋縫合早期癒合症(注)を疑わずに「とりあえずヘルメットをかぶりましょう」という事案が少なからず出てきています。0歳からの頭のかたちクリニックでは頭蓋縫合早期癒合症(注)をしっかり診断して見逃しをなくそうと努めていますが、その時にいろいろな科の先生方とのチームワークがあるということは本当に心強いです。
(注)頭蓋縫合早期癒合症(ずがいほうごうそうきゆごうしょう)は、頭蓋において本来であれば離れているはずの2つの骨がくっついてしまっていたり、複数の骨がくっついて変形する病気。頭の形が不自然になったり、まれに脳の発達に影響が出たりすることがある病気。
小室:私は小児外科医なのでどうしても形にこだわってしまいますが、たとえば発達面で危惧されることがある場合は小児科の先生の力が必要です。そうやって各専門家の強みを活かしながら、組織全体がレベルアップしていっています。現在は日本で相当な実績のある大家の先生が集結してくださっているので、理事長である私も責任重大ですが、本当にいい雰囲気になってきていると感じます。特に最近、五味先生の力添えで全国の名だたる小児脳神経外科の先生方も集結してくださいました。これは非常に頼もしいですね。形を見た時に、心配な時はやはり脳外の先生を頼りにするので、専門家がいてくださることで安心できます。これは大人専門の脳外科医ではおそらく分からないことなので、こうして全国の小児脳神経外科の主な先生が来てくださっていることは患者さんにとってもこれ以上ない頼もしい環境です。 各科の専門医が月に一度ミーティングをして、いろいろな意見を取り入れ工夫しながら、どんどん診療を良くしていこうとやっています。そういったところは他院とは全く異なる、当院ならではの強みではないでしょうか。 もちろんデータに基づいて評価し、それを診療実績の積み重ねからなる客観的なデータでフォローしているということも他のクリニックでは成し遂げられない大きな強みの一つです。
小室:駅から近い、紹介状不要、オンライン予約可で待ち時間を短くすること、快適に過ごすための院内の空間設計など、クリニックとしてこだわっているところはたくさんあります。授乳室やトイレなどをクリニック内に設置していることなどもその一例です。 土日祝祭日の診療もこだわっています。ご両親が共働きの場合は土日ぐらいしか来られないので、週末もやっているという点は患者さんにとって重要です。
五味:「質問や不安なことはないですか?」と、オープンクエスチョンで何でもお伺いするようにしています。また、3Dスキャンのデータ処理にはどうしても時間がかかるので、お待たせしている間に医師とは別のカウンセラーがヒアリングをします。どのような理由で来られたのか、心配事やご質問についてもそこである程度聞き出していただいて、その情報を元に診察するようにしています。やはり医師の前ではなかなか言えないこと、言おうと思っていても忘れてしまうことなどがあるので、あらかじめそのようなヒアリングをしておくといろいろな不安も分かって対応もできます。まずは一部のクリニックで試験的に導入していますが、比較的有効なのではないかと感じています。
大賀:3Dスキャン撮影の待ち時間の使い方は、0歳からの頭のかたちクリニック福岡でもとても気になっていたところです。0歳からの頭のかたちクリニック福岡には遠方から来られる方も多いので、そこでの待ち時間は非常に重要ですよね。ですから私自身が直接お話を伺うようにしていますが、そうすることでまたこちらにもいろいろな地域の情報が入ってきます。親御さん両方の意見の相違やその背景などもわかりますからね。
小室:診察では、ヘルメットがずれる、汗をかく、春夏の治療の場合には暑くてかわいそうといったお声が多いですが、「暑くても最初の1、2ヶ月はとにかく頑張ってください」とお伝えしています。治療期間の後半は多少はヘルメットを装着する時間を短くしてもいいですが、最初の1、2ヶ月は大事なので「そこは我慢して心を鬼にして頑張ってください」と私は言っています。
五味:暑さを懸念してヘルメットを躊躇する方も中にはいらっしゃいますよね。そこで暑さ対策をまとめた冊子を作成しました。どれも常識的なことばかりですが、それでも少しは安心されるかなと思います。ヘルメットのずれに関しては、ずれた時にどうすべきかというノウハウが我々の中でもできてきたので、クッションの対応などをお伝えしています。そもそも、ずれてもいいものだというお話もよくしますね。ほんの少しのずれでも心配される方が多いですが、治療としては斜頭の部分に空間が空いていることが大事なので、そういったヘルメットの原理をきちんとご説明してあげることでご家族は安心されます。
小室:皆さん喜んでくださって、「先生に言われてやって良かったです」と言われることは非常に多いです。最後に一緒に写真撮影を頼まれることも多く、そういった感謝のされ方は嬉しいですね。
西巻:私も最後の卒業の写真を一緒に撮りたいという方はいらっしゃいましたね。それから、お子さんの中には首の座りが少し遅い良性先天性筋緊張低下症(注)の子も結構紛れています。私は小児科医として早期療育の仕事もしていたので、「立てるようになるにはどういう風に膝の上に座らせてお尻を上げてあげるといい」とか「ソファにコーナーを作って、こちらから向こうに伝い歩きで行けるようにするといい」といった、頭の治療とは関係のない話をお伝えすることで感謝されることもあります。
(注)良性先天性筋緊張低下症(りょうせいせんてんせいきんきんちょうていかしょう)とは、生まれつき筋肉のハリが弱く、体がふにゃっとして見える状態です。首すわりや歩き始めなどの発達が少し遅れることがありますが、多くの場合、成長とともに自然に改善します。
西巻:私は話すのが好きなので、スタッフとは頻繁にコミュニケーションを取るようにしています。それに尽きるような気がします。
大賀:例えば形成外科の先生と小児外科の先生と同じ診療の場で話ができて、みんなでネットワークが組めるということはまさに医療の原点で、重要なところですよね。できるだけ多くの話をすることでその分お互い多くの役に立つ情報交換ができるので、スタッフもドクターも関係なく、ボーダレスなやり取りを心掛けています。お子さんを一緒に診ていく、トータルで満足度の高い医療サービスを提供していくために、そこはかかせない重要なポイントです。
小室:ご両親が悩んでこれから頑張っていきましょうという時に、親御さんだけが頑張るのではなく、スタッフも医師も全員で頑張りましょうという雰囲気になるのが一番いいですからね。
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